アルバム「かつて天才だった俺たちへ」が届いた
アルバムが届いた!
因みにお2人のトークと曲紹介の入ったラジオ版です。
待ちに待ったアルバムが届き、テンションが上がっております。
昨日から10周ほどしておりますが、私の知識では未だレビュー出来るレベルに達してはないので、本日は取り急ぎ第一印象を。
後ほど有識者(?)の方や、御本人たちのお話しを聞いた上で、随時更新していこうと思います!
全体の感想:ストーリー性が高く、ボリューム満点の(ミニ)アルバム
「ミニアルバムではない」という思想に共感できるボリューム感
御本人たちもトークで仰っていたように、ミニアルバムの満足感ではありませんでした。毎週ラジオを聴かせていただいている私から見ると、人間的にも、音楽的にも、今のお二人の引き出しを余すことなく見せてくれているなという印象を受けました。トークが入っているのもありますが、普通に歌詞の内容と文字数が多いです。次の曲に気持ちを入れ替えるのが大変な曲もありました。え?どういうこと?となっている間に曲が終わったりと。とにかく、何度も意味を咀嚼したくなるような質量のアルバムです。
言葉が好きな人であれば、色々と考察するのも楽しいです。最終的に前向きな感じに纏まっているので見過ごしがちですが、何曲か、お?っと思うような(語彙力)曲もございました。しばらくヘビロテが続くでしょう…
自分たちの世界からリスナーに向けた発信へ
お2人の変化
これまでのアルバムとの大きな変化で言うと、菅田将暉さんの客演が入っている事からも分かるように、お2人の音楽表現の範囲が広がったのではないでしょうか。
ラップは自分の生き様を歌うと以前記事でも紹介しましたが、最初のアルバムなんかは本当に自己紹介的に、自分たちの人間性を表現されていました。
不良ではないヒップホッパーだよ。パリピじゃない2人だよ。教室の隅っこレぺゼンだよ。という内容(かなり曲解)が「たりないふたり」だとしたら、そこから、卑屈にならずに、逃げずにスポットライトを浴びていくぞ!という決意の表れたアルバムを出し、そして今、お2人の音楽表現は、聴いている誰かを見据えたメッセージを発するようになったのだと思いました。
リスナーへのメッセージ
欠けている人間であることは自分たちでも認めている。
そんな自分たちに自信と誇りを持って活動している。
そして今回のアルバムでは、この活動がリスナーの糧となるということも視野に入れた表現をされていました。
ハッキリとお前ら頑張れ!といった言葉はありませんが、可能性はあるよ。というような、押しつけがましくなく背中を押してくれている感じのアルバムだと思いました。
寛容ではない日本という国に対するモヤモヤ
ドッキッとするメッセージも?
そんな前向きなメッセージがこもったアルバムですが、一つだけ、思想的なものを勝手に感じました。そこまで強い主張ではないのかもしれませんが、個人的に響きました。多少の拡大解釈になるかもしれませんが、お付き合い下さい。
作詞担当のR-指定さんの性格は、特定の誰かを攻撃したり、特定の何かに「ふざけんな!」と本気でブチギレるタイプの方ではないのかな…と思っています。その場のノリとか、ふざけてならあると思いますが。少なくとも、攻撃的な音楽表現をする方ではないと認識しています。
だからこそなのか、特定の小さいことに目くじら立てるなよ、、
というような思想を曲のなかで度々感じられます。
私は白黒付けるのが得意ではないので、この考えには強く共感できます。
カウンターカルチャーであるHIPHOP
好き嫌い、いい悪いをはっきりと決めることは、それ以外のものを排除してしまうことに繋がります。HIPHOPはカウンターカルチャーです。特異な文化には寛容ですが、日本においては、その分営まれる領域は狭くなりその領域の中で排除が起こることもあるという、ある種の矛盾を孕んだ文化であると以前お話ししました。
では、ラッパーであるRさんは今回のアルバムで何かに反抗しているのか?
と考えてしまいますよね。特定の個人への攻撃や、国家権力に反抗している様子は私的には見受けられません。
ですが、Rさん及びCreepyNutsさんの楽曲を聞いた時、いつも頭に浮ぶワードがあります。
それは「憂う」という言葉です。
「耳なし芳一style」でも憂うという言葉を使われていますが、CreepyNutsさんにピッタリだなと思いました。
では何を憂いているのか。今回のアルバムで私が「あ~憂いてるな」と思った部分をピックアップしました。
ヘルレイザーより抜粋
ー煙たがる正義の味方が
どっかで大量に炊いてるバルサン
ーすぐに繋がれちゃうから
どこでもドアみたいに
孤独も忘れちゃう
でも心根は閉じちゃうー以下略。
ー重箱の隅をつつく
重役ども夢うつつ
耳なし芳一styleより抜粋
知ったような顔知ったような事
知ったようなロぶり
常上から目線の国
隠れて石投げては火あぶり
I SPIT ON YOUR GRAVE
そんな世を憂いsingin'
I SPIT ON YOUR GRAVE
散った仲間に一輪
I SPIT ON YOUR GRAVE
平家の怨念ですらもchillin'
根に持つタイプ手に取るマイク
代わりに恨み晴らしたるわmy friend
Dr.フランケンシュタインより抜粋
ーみんな歩幅を合わせ同じ方へ
歩かされて来たからです
列をはみ出すとすぐ仲間はずれ
と言い聞かされて来たからです
狭い部屋に押し込まれて
教え込まれて来た運命
窓の外に思いをはせて
あんな風に笑っちゃダメ
ー歪な自らを誇れない
整えられて来たからです
下手に身の丈以上は望めない
指をさされて来たからです
下ばかり見て歩くくせ
誰も彼もが品定め
人の転ぶ様を見てせいせい
あなたに似て来たからです
ーDr.フランケンシュタイン
恨んでいない
貴方のおかげで私がいる
本当に恨んでない?
言葉のはしばしに、日本という国のせまっ苦しい雰囲気を憂いているのを感じられないでしょうか。腹の中に抱えている静かな怒りすら感じることもあります。
特に最近では、自殺してしまった芸能人さんなどもいらっしゃいますし、心に刺さる内容でもあります。
はっきりと怒っている曲はありませんが、何かきっかけがあれば曲で大爆発してしまうこともあるのではないかとドキドキしております。兎に角、リスナーに思考停止させてくれない楽曲というのが、CreepyNutsさんの魅力の一つであるということです。
これからも目が離せませんね…
曲ごとの感想:大量の研究課題が手に負えない
一曲ずつの感想です。今後もっと掘りたいと思ったら解説を付け足したいと思います。
曲数は全部で7曲です。
1)ヘルレイザー
2)耳なし芳一Style
3)オトナ
4)日曜日よりの使者(CreepyNuts×菅田将暉)
5)サントラ(CreepyNuts×菅田将暉)
6)Dr.フランケンシュタイン
7)かつて天才だった俺たちへ
1)ヘルレイザー
「ヘル・レイザー」とはイギリスのホラー映画だそうです。
その映画に登場するルマルシャンの箱と呼ばれる小箱は、「組み替えることで究極の性的官能を体験できる」という伝説を持つ謎のパズルボックスです。
この箱と、彼らにとってのハコ。ライブハウスなどのハコですね。これをかけた曲だそうです。つまり、生でライブしたい!という曲です。
それから箱は、コロナ禍のご時世、全て遠隔で済ませてみんな箱の中に閉じこもっているという意味もかかっているのでしょう。
意味をかけながら心地よいリズムでライムし続けているので、ノリノリで聞ける一曲です。フローが少し早口のボカロ曲みたいな感じもあって、すごく好きです。
ただ、このルマルシャンの箱、性的快楽?を得られる箱なだけに、ライブや、生での快感がかなり卑猥な言葉で表現されており…人前で聞きづらいです(笑)
2)耳なし芳一Style
スキル全開!
一番くらいました。ちょっと言い表すのは時期尚早ですね。時間を空けて整理します。
こちらは自分のラップのスキルを見せつける、ボースティング曲です。タトゥーは入っていないし、装飾もないけれど、自分をみたらみんなこれまでのオレのヤバい韻を思い出すぜ。見た目で表さなくても自分のラップのうまさは知れ渡ってるぜ(曲解)みたいな感じの、キレキレの曲です。こういう曲めっちゃ好きです。
温厚な感じのRさんですが、ラップに絶対的な自信を持っているのが垣間見えるのが個人的に好きです。
スキルの更新
新鮮だったのが、同じ言葉を3回も連続で繰り返すラップの仕方がRさんの曲では今までになかったので驚きました。同じ言葉を繰り返す分、一曲に詰め込む言葉が減ってしまうので、繰り返し同じことを言い続けるラップは海外でもよくありますが、CreepyNutsさんはそういったことはしないスタイルなのかなと勝手に思っておりました。
ただ3回「耳なし芳一style」という言葉を繰り返しているのは全く蛇足になっていないし、その後のライムにこのパンチラインが埋もれてしまわない効果的な使い方だと思いました。
韻もすごいし、掛けている言葉の奥行もすごいです。1バース目で、「例の琵琶法師のごとく…」から始まったのには驚きました。色んなものを頭の中で紐づけていく言語感覚が本当に優れていると感じますよね。
ラップに、言葉にどれだけ重きを置いているのか、誇りを持っているのかが分かる一曲でした。
3)オトナ
内容に一番共感できます。
欠陥のある人間をレぺゼンしてくれてありがとうという感じです。
自分の足りないところを呆れた顔で憐れまれた時の情けなさがフラッシュバックして、泣くかと思いました。「まじめな顔してマトモじゃないのはお互い様ですやん」って歌詞がツボでございます。見た感じまじめなのに、ネジが外れているCreepyNuts。Rさんと松永さんの、お2人の関係性がすごく良いなと思いました。そんな風に付き合える友人が欲しいですね。
4)日曜日よりの使者(CreepyNuts×菅田将暉)
実はYOUTUBEで見てから、すごく楽しみにしていた曲です。
元の『日曜日よりの使者』に寄り添ったラップをしていて、歌詞の行間をRさんなりの解釈で埋めてくれたという印象です。菅田さんの声も凄く良いですね。
前曲のスキル全開!という感じとはまたギアを変えた、伝えるラップをしているのかなと思いました。間を取って、聞き取りやすく歌ってくれています。
まず原曲が素晴らしいですしね。特に響いた言葉があるので言わせてください。
いっそどん底まで落ちこみな
飛び降りたいなら飛び降りな
でもその前にこの音に乗りな
日曜日よりの使者
というラップパートと
流れ星が たどり着いたのは
悲しみが沈む 西の空
そして東から昇ってくるものを
迎えに行くんだろ 日曜日よりの使者
という元の歌詞にすごく感動しました。つらい夜を何とか超えて、朝を迎える描写に胸を撃たれますね。カラオケでラップも込みで歌いたい一曲です。
5)サントラ(CreepyNuts×菅田将暉)
ラジオでのやり取りも込みですごく楽しめる一曲です。
菅田さんとの兼ね合いもあるでしょうが、仕事に対する姿勢が見える曲だと思いました。表現者の想いみたいなものを感じます。歌詞もそうですが、トラックがCreepyNutsさん的には今までにない感じで(こればっか言う(笑))よかったです。ロックな感じとラップが混ざっていて、菅田さんがいてこその感じが面白かったです。
6)Dr.フランケンシュタイン
言い表せないけどかなり気になる曲!!
まず歌い方から新鮮でした。柔らかい感じで。
そんなRさんもいらっしゃったんですか⁉好き。
そしてトラックも、弾き語りみたいなシンプルで切ない感じ、センス系ではないですか。
そんな松永さんもいらっしゃったのですか⁉聞いてないです、、好き。
フランケンシュタインに作られた怪物目線の曲だそうですが、先述したように何らかの思想をムンムン感じました。Rさんの憂いてる感が出ていました。
7)かつて天才だった俺たちへ
溢れ過ぎる感想を記事にしておりますので是非に↓↓
取り急ぎののご報告でした…
お付き合いありがとうございました。
長々と失礼しました(>_<)
最近愛が止まらなくて。